大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)3377号 判決

被告人 蓮見敏

〔抄 録〕

論旨第二点について。

犯人の犯行当時における精神状態の如何は裁判所が職権をもつて調査すべき事項であり、精神障礙の有無又はその障礙の程度に関して疑がある場合にはこれを判定するために特別の知識経験がある専門家に鑑定させることは妨げないのであるが、鑑定人の鑑定を待つことなく、裁判所が自ら必要な資料を蒐集し、或いは鑑定の結果を措信しないで犯人について精神障礙の有無又はその障礙の程度を判定することができることはいう迄もないところである。それ故、所論のように、鑑定人の鑑定が不正であるとか、非科学的であることを認めるのに充分であるほかは、常に鑑定人の科学的判断が裁判所が職権をもつて為した犯人の精神状態の調査の結果に優先するとか、裁判所の調査の結果が鑑定人が為した鑑定の結果に反対である場合には必ず再鑑定を命ずるか、新たに他の専門家に鑑定を命ずるかによつてさらに鑑定の結果を得、これと従前の鑑定の結果とを比較考証しなければならないということはなく、また、裁判所において鑑定の結果を措信しない場合でも、その措信すべからざる事由を判文上特に説明すべきことを命じた規定はないのである。それ故、原審が前記鑑定書中の本件犯行当時の被告人の精神状態は法家のいわゆる是非の弁別能力の完全ならざる心神耗弱の軽度のものと考えて誤りないと信ずる旨の鑑定人Aの意見を採用しなかつたこと及びこれを採用しなかつたことについて、特に判文上所論のような方法による説明をしなかつたことはまことにそのとおりであるが、かかる原審の措置に不法不当の点がないことは前説明によつて明らかであるのみならず、当審の鑑定人H作成提出にかかる昭和二十七年十二月二十七日附鑑定書中の記載及び証人Hの当公廷での供述とを総合すると、被告人は精神病質者ではあるが、本件犯行当時の被告人の精神状態は正常であつたことが認められるから、原判決には何等各所論の違法はなく、論旨は理由なきものである。

註 本件は量刑不当で破棄。

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